
半音よりさらに細かい音程である微分音を使った、ギターならではの奏法を紹介する・・そう銘打っておきながら、前編はビブラートの話だけで終わってしまいました。今回はビブラート以外の微分音が出せる奏法を紹介していきたいと思います。
チョーキング
押えた指で弦を押し上げて(or押し下げて)、音程を変化させるチョーキング。
ロックギターのイメージが強いですが、カントリーギターでも多用されています。
また、エレキギターより使用頻度は低いものの、アコギでも普通に用いられるテクニックです。
ギターの代名詞とも言えるチョーキングですが、その理由は表現の豊かさにあるのではないでしょうか。
良く用いられるのはクォーターチョーキングから1音半チョーキングくらいまですが、音の上げ方や戻し方のスピードを変えるだけでも、かなりのバリエーションができます。
他にも、チョーキングしてからビブラートをかけたり、チョーキングの前後にハンマリング・オンやプリング・オフを入れたり、チョーキングとボリューム奏法を組み合わせたり・・といった合わせ技を考えると、組み合わせは無限大と言えそうです。
また、自分で音程を制御しなければいけないという点で、チョーキングは弾く人の個性が出やすい奏法でもあります。
正確なピッチをキープしてしっかりと聴かせるタイプもいれば、音が上がりきらなかったり上がり過ぎていたりといったことを気にせず、勢いで聴かせるタイプのギタリストもいますね。
できれば前者を目指したい所ですが、後者でも別に間違っておらず、むしろカッコ良く聴こえることもあるのがギターの不思議な所です。
スライド
スライドは別に微分音と関係ないのでは?と思われるかもしれません。
確かに音程がフレットによって階段的に変化するので、厳密にはその通りです。
しかし使い方によっては、微分音的なニュアンスが強く感じられる奏法でもあります。
例えば、1弦12フレットから1弦13フレットへスライドすると、音程がEからFに一気に上がったように聴こえます。
一方、1弦5フレットから1弦13フレットへスライドすると、よほどゆっくり動かさない限り、音程は連続して上がっているように聴こえます。
これは、細かい階段を一気にたくさん上ったので、あたかも坂道を上ったように感じているのだと思います。
この疑似的な微分音は、スライドよりもグリッサンドで出すと言った方が良いかもしれません。
というのも、何フレットから何フレットまで、とはっきり表せるのがスライド、逆に開始音や終了音が不明瞭なのがグリッサンド(グリス)という微妙な奏法上の区別があるためです。
後者の曖昧さが、微分音の定義と良くマッチしています。
その他の奏法
ここからは私自身もあまり使いこなせていないので、多くは語れないのですがご了承下さい・・。
トレモロユニットが搭載されている必要はありますが、手軽に微分音が出せるのがトレモロアームを使ったアーム奏法です。
音程の変化が小さいものから大きいものまで、トレモロユニットにもいくつか種類がありますね。
トレモロアームが面白いのは、多用するギタリストと全く使わないギタリストが、結構はっきり分かれている所です。
持っているギターに付いてるよ!って人は、アーム奏法が自分に合っているか試してみると、意外とハマってしまうかもしれません。
他には、そもそもフレットで音程を作らないボトルネック奏法があります。
前述のスライド奏法と混同しそうでややこしいですが、スライドギターとも呼ばれるやつですね。
バリバリ弾きこなすには専門的に取り組まないと無理そうですが、ワンポイント的な使い方もたまに耳にします。
パッと思いつくだけでも、リッチー・ブラックモア、ゲイリー・ムーア、松本孝弘、といったギタリストには、普段は弾かないスライドギターをプレイしている曲が存在します。
ギターアレンジの手段の1つとして、準備しておくのも良さそうですね。
後は少しトリッキーですが、ネックベンドやワーミーペダルを使っても微分音が出せます。
どちらも多用するものではないかもしれませんが、それが繰り出された時のインパクトは絶大です。
見た目や音程変化の幅広さという部分が大きいですが、微分音という普段はない微妙な音程が出ていることも、その印象を深くしているのではないでしょうか。
さいごに
今回のブログを書いていて、名手と言われているギタリストは、微分音が出る奏法のイメージも強いように感じました。
例えば昔の三大ギタリストだと、エリック・クラプトンは特徴的なビブラート、ジミー・ペイジは音程変化の大きなチョーキング、ジェフ・ベックは音程を完全にコントロールしたアーム奏法のイメージがあります。
また、現代の三大ギタリストだと、デレク・トラックスがスライドギターの名手中の名手ですね。
もちろん1つの奏法だけでは語れないとは思いますが、微分音によってより細やかな感情が表現でき、聴く者の心にも伝わることの証左ではないでしょうか。
12半音では表せない感情が紡ぎ出せる微分音の世界を、ギタリストはこれからも探求して行く必要がありそうです!