
ジャズに興味があって聴いてみたけれど、いまいち良さが分からなかったことはありませんか?それでも何となくカッコ良いので、我慢して聴いてるようなこともあるかもしれません。実際に私がそんな状態だったのですが、あることがきっかけで一気にジャズを聴くのが楽しくなりました。
それは、演奏しているプレイヤー達と意識を共有することです。
といっても、曲の世界観やアレンジの意図といった、高度な部分ではありません(それもゆくゆくは大切になってくるかもしれませんが)。
ずばり「曲の構成を把握して、今現在どの部分を演奏しているかを認識する」ことです。
ジャズ好きの人にとっては当たり前かもしれませんが、言われないと気付かないことも多いと思います。
一般的なジャズは次の順序で演奏されます。
- イントロ
- テーマ
- 各楽器のアドリブソロ
- テーマ
- エンディング
これらの内、曲の大半を占める3.の部分は、2.や4.と同じ長さになっており、コード進行も基本的に同じです。
そうでないと、何を基準にアドリブを弾けば良いのか分からないですもんね・・。
トランペットやサックスといったホーンセクションも、ベースやドラムといったリズム体も、全員が同じ曲構成を共有して、それをもとに演奏が進んでいます。
当然、聴く方もそれを共有できていると、演奏者側と同じ気持ちで、まるでセッションに参加しているかのように楽しむことができます。
逆に、曲のどの部分を演奏しているかを見失うと("ロスト"すると)、一気に置いてけぼりになり、ジャズの楽しさが半減してしまいます。
とは言え、生演奏やCDなどの音源を聴く場合、手元に曲の譜面があることは稀です。
譜面を見ながら演奏を聴けないとなると、聴こえている音から自分自身で探っていくしかありません。
幸いにもアドリブソロに入る前にテーマが演奏されるので、その間に頭の中でざっくりと曲の構成を把握してしまいましょう!
という訳で、実際に曲を聴きながらやってみたいと思います。
曲はチャーリー・パーカーの「Now's The Time」です。
ジャズは4ビート(フォービート)が基本になってます。
ワン・ツー・スリー・フォーと4回ビートが鳴ったら1小節ですね。
1小節の演奏があったら、こんな感じの棒をイメージします。

曲の長さが把握できれば良いので、別に棒でなく四角形でも何でも大丈夫です。
Now's The Timeを聴いてみると、パーカーのアルトサックスが入るまでにイントロが付いています。
カウントしてみると4小節なので、こんな感じになります。

・・と、せっかくイメージしてもらったのですが、Now's The Timeではこの進行が二度と出てこないため、一旦忘れてもらってOKです。
ではここからが本番です!
アルトサックスがテーマを吹いている部分の構成を把握してみましょう。
動画の0:05から0:35あたりまでを注意深く聴くと、ほぼ同じメロディーが2回繰り返されていることが分かります。
テーマが2回繰り返されているということですね。
テーマ1回分の小節数を数えてみると、12小節であることが分かります(これを1コーラスと呼びます)。
念のため、2回目のテーマも同じ長さかどうか、確認してみてみると確実です。
図で表すとこんな感じに棒が並びます。

1コーラスの小節数は4の倍数や偶数であることがほとんどなので、図のように4小節ずつ縦に増やしていくと考えやすいかと思います。
これで1コーラスの小節数が把握できました。
後はこの12小節のどこを演奏しているのかロストしないように、気を付けながら各楽器のアドリブソロを聴けばOKです。
ソロはアルトサックス、ピアノ、ベース、ドラムの順番になっています。
注意点としては、各楽器のソロが必ずしも12小節目で終わるのではなく、次のコーラスをまたぐことが多いということです。
ソロを取る楽器が変わったから次の1コーラスが始まっている訳ではないので、とにかく先ほどの12小節の棒の中のどこにいるかを常にアップデートしながら聴いてみて下さい。
また、ドラムソロは基準のビートがなくなる部分があるため、ロストしがちになります。
演奏者と同じタイミングでテーマに戻れるように、自分の中でしっかりリズムを取ってみて下さい。
曲の構成とどこにいるかの把握ができるようになったら、次にコード進行をイメージに加えます。
と言っても、知らない曲をパッと聴いている段階ではキーもコードも分からないので、何となくでやっていきます。
例えばこんな感じです。

最初の4小節は「落ち着いた感じ」で表現しましたが、別に他の言葉でも、もっと抽象的なイメージでも構いません。
また「落ち着いた感じ」が3小節で終わって次に行くなど、人ごとに違った解釈をしても大丈夫です(1コーラスの長さの辻褄が合っていればOK)。
細かいコードネームやスケールが分からなくても、それぞれの小節の雰囲気を色付けすることで、曲の解像度を上げることができました。
それにより、棒だけの曲構成よりもロストする可能性を大分減らせそうですね。
また、次の「まとめにかかる」部分ではどんなフレーズが飛び出すかな?とか、1コーラスでどんな抑揚の変化をさせるのかな?とかいう観点で聴くこともできるようになり、ジャズを聴く楽しさが倍増します。
今回はいわゆるジャズブルース進行のNow's The Timeのため、曲構成はシンプルで分かりやすいですが、世の中には色んなタイプの曲が存在します。
例えば、ジャズブルース進行を2回繰り返した後に違った進行に行き、再度ジャズブルース進行に戻るようなタイプ(AABA形式)や、1コーラスの小節数が奇数の曲などです。
4ビート(4/4)ではなく3拍子(3/4)など他の拍子の曲もありますね。
それらは一聴しただけでは複雑に感じますが、良く聴いて今回やった方法で曲構成を少しずつ把握すれば、よほど難解な曲でない限りついていけると思います。
だまされたと思って、ぜひ試してみて下さい!