
難しい曲やフレーズを練習する時、ゆっくりのテンポから始めて徐々に速くして行く方法が定石になっています。しかし、ただ機械的にテンポを上げていくだけではうまくいかないことも多いです。今回は遅いテンポで練習する時の盲点について考えてみたいと思います。
まず最初に思い当たるのは、速いテンポ(ここでは目標のテンポと同義とします)になったら弾けない指使いで、練習してしまうことではないでしょうか。
例えば1弦5フレットの次に2弦5フレットを弾く時、遅いテンポだと各弦を人差し指の頭で押弦しても間に合います。
しかし、速いテンポになると指がバタついて弾けなくなるので、ジョイントというテクニックが必要になってきます(詳細は割愛しますが気になる方はブログ「見落としがちな左手のテクニック「ジョイント」を攻略しよう!」をご覧下さい)。
また、押弦する左手だけではなくピッキングする右手でも同じ問題が発生します。
先程の1弦5フレットの次に2弦5フレットを弾く時を考えると、遅いテンポではダウンピッキングだけで弾けていたのに、速いテンポだとアップ・ダウンの順(いわゆるアウトサイドピッキング)でないと弾けない場合が出てきます。
ピックではなくフィンガーピッキングでも同じで、右手の人差し指だけで弾けていたのが、1弦は中指で2弦は人差し指でないと間に合わないことがあります。
指使いが正確に書かれた譜面で既存の曲をコピーしているのなら、このような問題は起こらないかもしれません。
しかし、自分でソロを作ったりバッキングをアレンジしたりする場合は正解がないため、速いテンポになって初めて気が付くことも多いです。
そんな時は指使いをどのように修正するかを検討し、再度遅いテンポに戻って練習をする必要があります。
言わば、正解を自分で作っていくような作業ですね・・。
せっかく一度テンポを上げたのに、また遅いテンポからやり直すのは骨が折れます。
しかし、遅いテンポと速いテンポを往復する経験をすると、それに似たフレーズが再度出てきた時には正解が導きやすくなっているはずです。
指使い以外の盲点としては、消音が挙げられそうです。
遅いテンポでは音が自然に減衰して気にならなかったのが、速いテンポだと残った音と次に弾いた音が混ざってうるさく感じる場合があります。
特にギターの音は弾いてすぐに小さくなるので、ピアノやサックスなどと違って音を止めることに意識が行きにくく、音を出すことだけに注力してしまいがちです。
消音するには押弦している左手の指を浮かせたり、右手の手刀の部分でミュートしたりと色々な方法があります。
ただ音を消すだけですが、演奏の流れの中でやるのはなかなか難しいです。
この場合も、消音の方法を検討して遅いテンポから再度練習する必要がありそうです。
後はちょっと個人的で細かい所なのですが、ルーパーを使っている時にも遅いテンポの盲点があります。
2回スイッチを踏んだらループがストップするタイプのルーパーを使っているのですが、その2回の間隔があきすぎても詰めすぎても、ループは止まってくれません。
なので、遅いテンポの練習ではうまく止められていたループが、速いテンポだとタイミングが合わずに止められない現象が発生します。
他にも、最後に録音したループをスイッチの長押しで消すという操作ができ、実際にアレンジに組み込んだ入りしているのですが、この機能でも問題が出てきます。
スイッチを踏み始めてから一定時間が経つとループが消えるのですが、こちらが遅いテンポで弾いてようが速いテンポで弾いてようが、ルーパーが判定する"一定時間"は変わりません。
つまり、曲の狙った位置でループを消すには、テンポによってスイッチを踏み始めるタイミングを調整する必要があります。
結果、速いテンポで弾けるようにはなったのに、スイッチングの練習がまだまだ必要という状況が生まれることになります。
ここまではどちらかというとマイナス面の盲点でしたが、プラス面もありそうです。
例えば、セーハするコードフォームが続く曲を練習する時、遅いテンポだと左手がだんだん疲れてきます。
コードフォームを変えたりしないともたないかな・・と思いきや、速いテンポだと意外と消耗せずに弾けたりします。
これは左手の力を使っている時間が短くなるからですね!
後は、遅いテンポで弾きにくいと思っていても、速いテンポにすると案外気持ち良く弾けるというのもあります。
ギターレッスンをしていて感じるのですが、遅いテンポで弾くというのは意外と難しい動作です。
おそらく、それぞれの音の長さや繋がりをはっきり理解していないと、脳内でスロー再生して演奏することが難しいためだと思います。
もちろん、遅いテンポで正確に弾けるに越したことはありません。
しかし目的は速いテンポで弾けるようになることなので、固執し過ぎる必要もないと思います。
遅いテンポだと、弾いている時の楽しさも少ないですし・・。
テクニックやモチベーションを考慮して、適切なテンポで練習するのが良さそうです(それを決めるのが難しいんだと言われたらその通りですが・・)。
以上、「遅いテンポで練習する時の盲点」をいくつか考えてきました。
すべてに共通するのは、遅いテンポから速いテンポに一度行ったら終わりではなく、何回かの往復が必要だということです。
速いテンポに達してから修正して遅いテンポに戻るのは心が折れそうになりますが、「このままでは弾けない」ということが分かったぶんだけ、前進しているとも言えます。
あきらめずに練習を続けて、完全な形で速いテンポ(目的のテンポ)で弾けるように、お互い頑張りましょう!