
前回まで2回に渡り、弾き語りで良く使うコード譜に関するトピックを語り尽くしてきました。今回はコード譜以外の「ギター弾き語りのレベルアップに必要なスキル」をまとめてみたいと思います。
指弾き
これまで多くのギター弾き語りのアーティストを観てきましたが、ピック弾きの方がほとんどです。
もちろんピック弾きにはピック弾きの良さがありますが、メロディーと伴奏を同時に弾くのが、かなり難しい奏法でもあります。
つまり、どうしてもコードストロークやアルペジオが主体の一辺倒な弾き方になりがちです。
バンドの中で演奏するなど、ギターが全体の一部の役割を担う時はそれで十分かもしれません。
しかし、ギターが音楽の多くの部分を担当する必要がある弾き語りでは、物足りなく感じるケースが出てきます。
そんな時、指弾き(フィンガーピッキング)の出番です!
指弾きなら右手の親指でベース、他の指で和音とメロディーを弾くなど、複数のパートを混在させたようなプレイが容易です。
弾き語りでアレンジのアイデアが枯渇しがちなイントロや間奏、エンディングでも、できることが格段に増えます。
高度なソロギターのようなことをしなくても、音楽的な広がりを意識してアレンジするだけで、全体の響きがグッと良くなるはずです。
そもそも、ソロギターと違ってメインの歌がドンと構えている訳ですし・・。
指弾きを少し導入するだけでも、ピック弾きとの対比で弾き語り全体の色彩が豊かになります。
魅せ方が上手い弾き語りのアーティストは、ピック弾きが主体でも、1曲だけ指弾きの曲を入れて変化を付けるようなセットリストにしていることも多いです。
その指弾きがシンプルなフォーク調のアルペジオだったとしても、コース料理の口直しのメニューのように、飽きがこないばかりか次の曲へも良い影響を及ぼします。
1曲まるまるではなく、曲の一部だけを指弾きで弾くようなアレンジもできますね。
例えば、AメロとBメロは指弾きで、サビはピック弾きで盛り上げるような感じです。
これだと曲全体を通して、抑揚がしっかりとつけられそうです。
ただ、ピックを曲の途中から持つ手順が必要になってくるのが、注意点かと思います。
Bメロの最後に音を伸ばしつつ、近くに置いたピックを取る・・そんな動きもアレンジの中で考慮しないといけません。
必然的に本番環境を想定した「ピックを取る」練習も必要になってきます。
メリットばかりではありませんが、ピック弾きと指弾きの併用は、選択肢の1つとして持っておくと良いと思います。
そういえばギター弾き語りの元祖(と私が勝手に思っている)、20世紀初頭のカントリーブルースのブルースマン達は、知っている限り全員が指弾きです。
1人で音楽の様々な要素を表現するのに、指弾きが適していると判断されていたのかもしれません。
気になる方は、ロバート・ジョンソンやブラインド・レモン・ジェファーソンなどを検索して聴いてみて下さい。
歌以外のパートの把握
当たり前ですが、弾き語りをしている人は歌を歌いたかったり、伝えたいことがあったりするはずです。
なので、歌い方や歌詞の理解などに関しては、意識を非常に高く持って取り組んでいると感じます。
逆に言ってしまうと、歌以外のことに関してはあまり意識がいっていないこともあります。
ボーカル専業ならそれで良いかもしれませんが、弾き語りでは自分がバックバンドも兼ねないといけません。
歌以外に何が必要か、何をすべきなのかを把握せずに雰囲気で弾き語りをやると、例え歌が良くても聴いている人に伝わらない(もしくは何か足りないような印象を与えてしまう)ことが多いように思います。
特に既存の曲をカバーする時に、その傾向が顕著に見られます。
原曲のリズムやシンコペーションの位置などを把握しているでしょうか?
どんな曲でも弾き慣れた8ビートのストロークパターンで乗り切ろうとしていないでしょうか?
特徴的なキメフレーズをギターで再現し忘れてないでしょうか?
このブログの前編でも書きましたが、やはり原曲をしっかりと確認することが大事だと思います。
ギター弾き語りの伴奏方法について相談されることも多いのですが、正解はひとまず原曲の中にあります!
正解を把握したら、あとはギターで弾く方法を探っていくだけです。
それが難しいと言えばそうなのですが、何を目標にすれば良いかも分からない状態とは雲泥の差ではないでしょうか。
ただ、スマホやノートパソコンに付属のスピーカーなどでは、どうしても曲の大まかな所しか聴き取ることができません。
それなりのヘッドフォンやスピーカーなど、なるべく解像度の高いモニター環境で確認する必要があります。
ドキッとされた方は、一度自分が音楽を聴く環境を見直してみても良いかもしれません・・。
暗譜
最後は暗譜、つまり譜面を覚えてしまって、見ずに演奏することです。
今回は弾き語りについての内容なので、ここで言う譜面はコード譜になります。
譜面を見るか見ないかはケースバイケースなので、一概に決めることはできませんが、弾き語りの場合は見ないほうが良いことがほとんどだと思います。
と言うのも、譜面を見ているとギター弾き語りの"語り"が伝わりにくいと感じるためです。
観ている方としてはアーティストに自分の言葉で語ってほしいのですが、譜面を見ているとそこに書いてある言葉で語っているように感じてします。
これは視線が観ている側ではなく、譜面に行ってしまっている影響も大きいと思います。
また、"今"表現しているのではなく、"予め"作ったものを再現しているという印象も受けます。
もちろん予め作っておくのは必須だと思いますが、それをいかに感じさせないかもポイントになってくるのではないでしょうか。
スピーチなどで、原稿を読むか読まないかの違いと似ているかもしれません。
普段やらない季節のカバー曲をやる時だけ譜面を見る、とかならまだ分かります。
しかし、演奏し慣れた曲、ましてや自分のオリジナル曲まで譜面を見て弾かれると、少しあれっとなってしまわないでしょうか?
後は、単純に譜面台と譜面で視界が遮られるのも痛いです。
譜面台は、位置的にギターの高さくらいになることが多いです。
そうすると観客からはギターを弾いている所が見えず、譜面を見て歌っている顔だけが譜面の上から見える状態になります。
視覚的にも弾いてる感を強く感じられるギターという楽器を使っているのに、これはもったいないと思います!
ただ、譜面を使っていても魅せ方を工夫している人は、ちらほら見かけます。
例えば、譜面台を地面と平行気味の角度に倒しているアーティストがいました。
そうすることで、譜面台で遮られていた視界が一気に広がり、ギターを弾いている所も見えるようになります。
弾き語りをしている側としては譜面が見にくくなると思いますが、観ている側を優先させていて凄いなと感じました。
私自身が歌わないので、歌詞を覚える大変さは分からず、決して大きなことが言える立場ではありません。
しかし、前回までのブログで書いた通り、コード進行などのギターの部分に関しては、整理して覚えやすくすることが可能です。
最善を尽くしてパフォーマンスをするという意味でも、ぜひトライしてほしいと思います。
そういえば、ほとんど暗譜しているけれど、本番では不安なので譜面を用意しているという声もちらほら聞きます。
でもそこまでできているなら、後は試してみるだけですね!
ぜひ譜面なしのパフォーマンスを我々リスナーに届けてほしいと思います。