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演奏前に必ずする作業「チューニング」の話

ギターは他の楽器に比べて、頻繁にチューニングしなければなりません。弦にかかる力や振動・温度差などによって、音のピッチはどんどん変化していきます。

 

 

 

弦を張り替えたときも、しばらくの間は弦が伸びて音が低くなる状態が続きます(むしろ弦が伸びなくなると、その弦の品質のピークは過ぎているとさえ言われています)。

 

 

 

よく大物アーティストのライブで、ギタリストが曲ごとにギターをとりかえているのを、見たことがあるかもしれません。

 

これは、音色や見た目、もしくは変則チューニングに変える以外に、チューニングが合ったギターに素早くチェンジする目的もあるのではないのでしょうか(曲間にチューニングしながらMCをするテンポ感も、それはそれで良いものですが)。

 

 

 

今回はギタリストとは切っても切れない、チューニングについて書いてみたいと思います。

何を使ってチューニングするか?

 

チューニングの基準となるアイテムには、以下のようなものがあります。

  • クリップチューナー
  • エフェクター(に付属)のチューナー
  • スマートフォンのチューナーのアプリ
  • ピアノ等の他の楽器に合わせる
  • 音叉
  • ピッチパイプ
  • 絶対音感がある
  • 自動でチューニングするギターを使っている

正しいピッチに合わせられれば何を使っても良いと思いますが、本番中やスタジオ練習などの雑音の中でのチューニングには、クリップチューナー(主にアコギ)やエフェクターのチューナー(主にエレキ)が適しているかと思います。

 

自宅での練習時には、音叉を使うとピッチ感覚がきたえられそうですね。

 

最近はスマホでチューニングする方も増えてきている印象です。

どれくらい狂うのか?

 

暑い所から寒い所へ、逆に寒い所から暑い所へギターを持って行くと、チューニングが狂うのを体験されたことがあるかもしれません。

 

それでは、いったいどのくらい狂うのか、温度が5℃上がった時を考えてみたいと思います。

 

数字が嫌いな方は、結論まで飛ばして頂いても大丈夫です!

 

 

 

物体は(一部例外もあるらしいですが)温度が上がると膨張(のびる)、下がると収縮(ちぢむ)します。

 

ここで、弦の熱膨張率を1×10^(-5)[/℃]とします。

 

これは、1℃上がると長さの10^(-5)倍(10のマイナス5乗倍)伸びるということです。

 

 

 

650mmのスケール(弦長)のギターの弦が5℃上がると伸びる量は、650×10^(-5)×5=0.0325[mm]です。

 

かなり小さい数字に見えますが、ペグを回す量としてはどの程度なのでしょうか。

 

 

 

ポストの直径を8mm、ギア比を1:18とすると、ポストの円周は8×3.14=25.13[mm]

 

ペグを1回転(360°)回したときの弦の長さの変化は、25.13÷18=1.396[mm]

 

 

 

5℃上がったときの伸び量0.0325mmはペグの回転角にすると、0.0325×360÷1.396=8.4[°]

 

 

 

となり、意外とペグが回っている(音程が変化する)ということが感じて頂けたかと思います。

使用後に弦を緩めるか?

 

これについては諸説あると思いますが、個人的な見解を書きたいと思います。

 

あくまで普段使いするギターについてなので、ヴィンテージギターなどの場合は専門の方に相談して下さいね。

 

 

 

基本的には、使用後に弦を緩める必要はないと考えます。

 

時間ができたときに手に取ったり、アイデアが思いついたときにすぐに弾ける状態にしておくメリットがかなり大きいと思うからです。

 

 

 

ただ、ケースに入れての移動時や、冬場は少し緩めています。

 

移動時は、不意にギターに力が加わることがあるかもしれないためです。

 

冬場は、使用中は室温や手の熱で温められている状態ですが、使用後は(部屋の暖房を切るなどで)温度が下がり、弦が縮む(音が高くなる)方向になるためです。

 

ギターに通常以上のテンションが掛かるのは気持ち悪いですし、次回使うときにチューニングしやすい(チューニングは基本的に低い方から目標の音に合わせる)ように緩めています。

最後に

 

いかがでしたでしょうか?

 

チューニングは、どんなギタリストにもついて回る面倒ですが奥の深い作業です。

 

最後に、ジャズギターのヴァーチュオーゾであるジョー・パスの名言をご紹介したいと思います。

 

「ギターは工場でチューニングされてると思ってたよ!」

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