先日、知り合いが大物アーティストのライブに行きました。気になって感想を聞いた所、「知らない曲が多くてテンションが上がらなかった」とのことでした・・。アーティスト側も最善を尽くしているはずなのに、何故このような気持ちのギャップが生じるのでしょうか?
今回は単純接触効果(ザイオンス効果)の面から、リスナーとプレイヤーの温度差について考えてみます。
まずは単純接触効果とは何かというと、過去に触れたことのある情報や人に対して、新しいものよりも好ましく感じてしまう人間の心理現象のことです(参照:GLOBIS 学び放題×知見録)。
最初はそれほどでもなかったのに、何回か会っていると好意が生まれてくる、みたいなやつのことですね。
音楽に関しては、繰り返し聴いた曲が、徐々に良い曲に聴こえてくることがあります。
例えば、無意識に耳にする巷のヒット曲や毎週観ている連ドラの主題歌、ハマっているゲームのBGMなどを、いつの間にか好きになった経験がある方も多いのではないでしょうか。
知らない人がやるオリジナル曲よりもカバー曲の方がスッと耳に入ってくるのも、この効果で説明できるかもしれません。
ただ、接触回数が一定の閾値を超えると、逆に飽きたり嫌いになってしまうようです(「過度露出効果」と呼ばれるそうです)。
確かに、あまりに同じ曲を繰り返し聴いていると、嫌になってくることがありますね。
自分の意思で曲を聴かない選択ができれば良いのですが、強制的に呼び込み君の音をずっと聴かされるスーパーの店員さんなんかは、凄く大変だと思います・・。
さて、ここまでの言葉の説明でも何となく分かるのですが、よりすんなり理解できるように、単純接触効果を図に表してみたいと思います。
リスナーとプレイヤーの両方の観点から図にすることで、両者の温度差の原因も分かるかもしれません。
まずはこちらをご覧下さい。
リスナーが5つの曲に対してどのような印象を持っているか(どのくらい繰り返し聴いたか)をイメージした図です。
青色のラインは、繰り返し聴いて好印象を持つ閾値、赤色のラインは、聴きすぎて逆に嫌いになる閾値を表しています。
曲を繰り返し聴くことで、グラフは縦に伸びていきます。
青色のラインと赤色のラインの間が、ちょうどその曲が好きでどんどん聴きたくなっている段階です。
冒頭の大物アーティストのライブの話だと、この間に入っている曲1と曲2を生で聴きたいと思って、会場に足を運ぶ感じです。
一方で、まだあまり印象に残っていない曲3や曲4は、それほど好きではありません。
次に、プレイヤー(アーティスト)側のグラフを見てみます。
自分が実際にパフォーマンスしないといけないため、リスナー側よりも繰り返す回数が多い傾向にあるかと思います。
こんな感じで、リスナー側のグラフから、全体的に縦に伸びました。
ほとんどの曲が、赤色のラインを超えている状態になっています。
この時、ライブのセットリストとしてどの曲を選ぶかというと・・比較的好印象な曲3と曲4になるのではないでしょうか?
リスナーの曲1と曲2が聴きたいという思いと、齟齬が生じていますね。
ただ、プレイヤーがリスナーの気持ちを汲み取って曲1と曲2をやれば良いかというと、そうでもありません。
グラフの伸びがプレイヤーと同じくらいのコアなファンにとっては、曲3と曲4が聴きたいと思うためです。
グラフの状態は人によって違ってくるので、万人が満足するセットリストにするのは、骨が折れそうですね。
ベスト選曲のライブなら曲1と曲2、コアなファン向けのライブなら曲3と曲4、普段はその間を取って曲1と曲4とするなど、状況に寄っても変わってきそうです。
では、繰り返し聴いて赤色のラインを超えた曲を、青色と赤色のラインの間に戻す方法はないのでしょうか?
最も単純な方法は、しばらくその曲をやらないことかもしれませんが、ちょっと消極的ですね。
そこで採用されるのが、曲の演奏方法を変えるという手法なのではないかと思います。
よくある、「ヒット曲のアコースティックバージョン」みたいなやつですね!
演奏方法を変えると曲に新鮮味が生まれます。
次の図は、プレイヤーが曲1をアコースティックバージョンにした時のイメージです。
これで気持ち良く演奏できて万々歳!と思いきや、リスナーに取っては聴きたいバージョンではないかもしれません。
最初の図のリスナー側でも同じ量を減らすと、このようになります。
曲1が、繰り返し聴いたことで好きになった曲ではなくなってしまいました。
これは、聴きたかった曲をアコースティックバージョンでやられてガッカリ・・というあるあるの、説明になっていないでしょうか。
以上、リスナーとプレイヤーの温度差を図にしてみました。
今回はライブのセットリストを例にしましたが、例えばジャズのアルバムの選曲なんかでも、同じことが言えると思います。
「Sandards」というタイトルなのに全然知らない曲ばかりでガッカリ・・みたいなやつですね。
いずれにせよ、リスナーとプレイヤーがどういった状況にあるかを把握し、その中でプレイヤーはどこを狙っていくのか?を考えることが重要ではないかと思いました。
今後も何か面白いテーマがあれば、図にしてまとめてみたいと思います。



